奮闘日記 (2001/11/07)

 『配本なんていらない』


大型店やチェーン店での仕事で沢山の本に出会えるのは嬉しいけれども、とにかく本が多すぎて一冊の本とちゃんと向き合えない。ふと気がつくと誰かと本のことを話そうにもほとんど話すことがない。こんなに長い時間、店で仕事をして本を触っているのに……このように感じている人は結構いるのではないでしょうか? 現場は機械が入って省力化され(スリップを数えなくてもいいとか)てもその人の負担が少なくなったと言う話はあまり聞きません。たいがい人数も減ってしまいます。

自分で頼んだ本を並べ方を考えて店に出すのは楽しい仕事です。一方、頼んでもいない本をどうにか棚や平台に片づけるのは本当に疲れます。返品の時も「俺が頼んだ訳じゃないし」と、心が痛まないような気が…。絶対売れると思った本を返品するときは、「君の死は無駄にはしない!」と叫びたくなりますよ。だから、新刊の配本が少ないのは全然かまわない。欲しいと思っても手に入らなくて歯痒い思いをする事もありますが、ちょっと配本日から遅れればだいたい入ってくるし、全然だめなら店は小さいんだし、他の本を置けば売るものがないなんてことはない。そんなやり方で文芸・人文の書籍の売上(シェア12〜15%)は一年以上150〜200%で推移して、雑誌の落ち込み(-5〜10%、シェアが45〜50%だからでかい)をカバーしてきました。

往来堂も配本が無いわけではありません。先日も渡辺淳一がなんと10冊も! しかもそれがどんどん売れていきます。楽でしたねー。書店の仕事は段ボールあけて平台に置くだけで売上が立っちゃう。これは癖になります。ある書店にこれが当たり前だった(つまり送られて来るのを待って、並べるだけ)時代がもしあったなら、意識を変えてそこから抜け出すのはかなり難しいでしう。麻薬みたいなもんだ。

いろいろ書きましたが、もっと一冊とゆっくり向き合いたいけれどなかなか出来ないと思っている人には、往来堂くらいの店なら、その小ささと配本の少なさを逆手にとってやり方はいろいろあるような気がします。もちろん置くのも置かないのも誰の責任でもなくあなたの責任です。一番の仕事は、いい本、そして一緒に置ける本はないかと、新・既刊にこだわらず探すこと。「○○が送って来ない」なんて言えなくなります。でもそう言う愚痴のない売場って気持ちが良いではないですか!


●千駄木・往来堂書店
●笈入 建志(おいり けんじ)
●そう言えば『スロー・イズ・ビューティフル』って新刊があったな。読んでみよう。