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  冥土めぐり  
家族のなかの「女」
家族のなかの「女」
いちばん小規模で、人が初めて所属するコミュニティが「家族」ではないでしょうか。好むと好まざるとにかかわらず、人格や趣味嗜好をかたちづくるのに大きな影響を与える存在。親密さや付き合いかたに違いはあれど、どこまで行っても切り離せない存在でもあります。

「冥土めぐり」の主人公・奈津子は家族の影に追われ続けています。裕福だった過去に執着し理想の女性像を奈津子に押し付ける母と、ろくに働かず果てしない浪費をつづける弟。二人は社会との関わりをほとんど持たずに、
閉じた家族三人の環の中でぐるぐると回り続けています。そんな家族に風穴をあけたのが奈津子の夫である太一。結婚して少したってから、脳の病気のために体に不自由が残り、手当をもらいながら車椅子生活を送っています。
新しい不幸の種に見える太一が、なぜ奈津子にいままでの家族から逃れる術を与えてくれたのか。奈津子と太一が十時発のこだまで向かった、とある保養所へのふたり旅―冥土めぐり―を通して、その理由を探してみてください。

一方で本書にもう一つ収められた「99の接吻」の菜菜子はその真逆。四姉妹と母という女ばかりの家族の中で末っ子の菜菜子は姉たちへの狂気ともいえる愛を抱えていて、家族から逃れられないことをむしろ快感としています。そしてこちらもやはり、最近近所に引っ越してきたよそ者のSという男が姉三人を夢中にさせ、保たれていたはずの家族の均衡が乱されていきます。そしてなんといっても、舞台が谷根千界隈なので、おなじみの固有名詞を追いながら想像をふくらませるのも楽しそうです。

家族への思いは全く違うようでいて、閉じられた家族の中で生きる女の姿が描かれた二篇を比べながら読んでみてはいかがでしょうか。
(小田垣)
著 者 鹿島田真希
出版社 河出書房新社
発行年 2012.07
版 型 四六上製
ISBN 9784309021225
定価 1,470円(税込)
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