【週間文庫売上BEST10】2022/5/13-19『流浪の月』『叙述トリック短編集』ほか



1、凪良ゆう『流浪の月』創元文芸文庫

映画公開のタイミングということもあって、堂々の一位!僕も最近読みました。

「愛ではない。けれどそばにいたい。」(帯より)

人間同士の関係性を表す言葉はたくさんありますが、既存の言葉をどれだけ尽くしてもとらえきれない関係もたくさんあって、むしろ一言でズバッと答えられる関係の方が少ないように感じます。

それこそ「愛」なんて大きな言葉は、一見広くさまざまな感情を包括できているようにも見えますが、それだけに誤った理解や解釈を生みやすい言葉でもあります。だからこそ、慎重に使う必要がある。

本作では、そういった誤解を世間全体から向けられることになる二人の苦しみが痛ましいほどに描かれます。

物語として読んでいる私たちには、実際の事実や彼らの心情を詳しく知ることができる。

しかし、現実の世界ではどうでしょうか。知りもしない内情について、こうだろう、と勝手に決めつけてしまってはいないだろうか。独りよがりの合点に基づいて、身勝手な善意を向けてしまってはいないだろうか。もしあなたが、自分はそうではない、と自信を持って言い切れるのならば、その蒙昧さには早めに気づいた方がいいかもしれません。

主人公たちに向けられる好奇な視線、無理解ゆえのお門違いな善意。作中で描かれるそれらに読者は逐一辟易させられますが、別の面、別の場所では、もしかするとそういった行為に加担してしまっているかもしれない。

無意識ゆえに気付きにくい認識の過ちと、そこに潜む加害性に目を向けさせる力が、本作からは感じられました。

 

2、佐伯泰英『風に訊け 空也十番勝負(七)』文春文庫

引き続きランクイン。時代小説作家には速筆・多作の方が多い印象ですが、やはり佐伯さんはずば抜けているようで、店頭では「佐伯が新刊出してるからあの作家の新刊も出てるはず。え、まだ出てない?」みたいなやりとりがしばしば交わされます。

 

3、ルシア・ベルリン『掃除婦のための手引き書』講談社文庫

こちらも引き続きランクイン。早くもロングセラー、エバーグリーンのかほりが漂っています。

新刊(単行本)『すべての月、すべての年』もついにランキング棚にやってきました。

 

4、凪良ゆう『わたしの美しい庭』ポプラ社

こちらも凪良ゆうさん、去年末に刊行された文庫です。

カバーの特殊加工が印象的な一冊。宝石を散りばめたようなこの加工、なんというんでしょうか。特殊加工マニアの方いましたらぜひ、ご教示ください。

最近だと光文社のアンソロジー『Jミステリー2022 SPRING』も同じ加工でしたね。

 

5、佐々木譲『雪に撃つ』ハルキ文庫

北海道を舞台にした警察小説シリーズ、第九巻。

佐々木譲さんといえば、日露戦争に敗れた日本のその後を描いた歴史改変小説『抵抗都市』も話題になっていましたね。

 

6、アレクシエーヴィチ『戦争は女の顔をしていない』岩波現代文庫

ほんとにずーっと売れています。コミックも再入荷しまして、各巻とも潤沢に在庫がある状態です(5/21現在)。今が狙い目。

 

7、種田輝豊『20ヵ国語ペラペラ 私の外国語学習法』ちくま文庫

30歳にして20ヶ国語(!)をマスターした著者による、言語習得体験記。

原著は50年以上前のものですが、瑞々しい筆致で読み心地が非常にいい。

語学の天才はやはり、日本語の扱いも一級品なのですね。

 

8、村田沙耶香『生命式』河出文庫

村田ワールド全開の短編集が文庫化。

単行本の時にも気になっていたのでパラパラとめくってみましたが、むむ、これは読みたいやつだ。

帯文の「正常は発狂の一種」という言葉が冒頭数ページ目からはやくも炸裂していました。

そして解説が朝吹真理子さん。うむ、買って帰ろう。

 

9、似鳥鶏『叙述トリック短編集』講談社タイガ

一年前に文庫化されたものですが、自分で読んだのをきっかけにまた積んでみたらランクイン。口コミでも広まっているようですね。

叙述トリックの難点は、「叙述トリックが用いられていること」それ自体がネタバレになってしまうこと。

同じような衝撃を求めて叙述トリックものを探すと、その時点で驚きが半減してしまうというジレンマがあります。

しかし本書は、タイトルで大胆にも「叙述トリック宣言」を突きつけている。読者は平等に、その事実を知らされた状態で読むことになります。

これはこれで、新しい読書体験。トリックの性質についてあらかじめ知った上で、ここまではわかった、ここからはわからなかった、という楽しみ方ができます。

そして、カバーにもちょっとした仕掛けが。ビニールパックされている講談社文庫ならではの新しい試みです。こちらもぜひご確認ください。

 

10、辻村深月『かがみの孤城 上』ポプラ文庫

これもずっと売れ続けていますね。2018年の本屋大賞受賞作。冬にはアニメ映画も控えています。

小〜中学生のお客さんにおすすめを聞かれたら、真っ先にこれを差し出します。上下巻でボリュームはあるけれど、のめり込んで読めること間違いなし。もちろん大人も楽しめますよ。

 

カテゴリ: 文庫BEST10

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