『神林先生の浅草案内(未完)』


飲食店を紹介する本はたくさんある。いや、いまどき本で店を探す人はいないでしょ、グルメ情報サイトで見れば済むことだし、と考える方も多かろう。でもそんな方にこそ、この本を手に取ってもらいたい。『孤独のグルメ』の主人公を現実化したような男の極私的グルメガイド、ただし東京・浅草限定。なぜ浅草なのか。それは彼が都立浅草高校に勤めていた国語教師・神林先生だからだ。
40年以上にわたって食べ歩き・飲み歩きをしてきた先生が浅草エリアで訪れた店の数は1255軒。その中から厳選してランチに訪れるべき店26軒、仕事のあと一人で飲みに行きたい店11軒が紹介されている。
もともとは自分の舌と脚で探し出したお店のランキングをわら半紙に刷って、職員室の同僚たちに配っていた「ミニコミ」が始まりとのこと。繁華街としての歴史が古い浅草は飲食店の数がとても多い。観光客にもわかりやすい表通りの店だけでなく、路地の奥にひっそりと、しかし地元の方々に深く愛されている店がたくさんある。公立校の先生には転勤がつきものだが、せっかく浅草で仕事をしている間くらいは全国チェーンのお店ではなく、そういうお店も味わってもらいたいと、特に若い先生たちに向けて作っていたというのも微笑ましい。そしてますます活躍の場を広げようとしていたその矢先、突然先生は亡くなってしまう。残された未完の浅草案内が本書というわけだ。
味だけではなく、店の歴史、女将や大将の人柄、店の雰囲気、そしてお値打ち感などを自分の感覚で存分に楽しむ神林先生が、グルメサイトに表示される星の数を気にする癖がついてしまった私に「自由にやりなよ!」と言ってくれているようだ。
(『週刊SPA!2022年1月25日号掲載)




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